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と言うわけで、書きかけですが「世界が終わるまで番外編」をちょこっとだけ公開。
えっち臭いのを期待された方には申し訳ありませんが、淡々とした切つなめの話になる予定です。
番外編と言うよりも続編?
ちょこっとしかありませんし、書きなぐりではありますが、宜しかったら↓からどーぞ。



「始まるまでは大変だったが、いざ始まってしまえば暇だな」

「それ、会計に聞かれたら殴られるかもね」と言う櫻井の言葉通り、校門脇に設置された本部テントにて模擬店の食券を販売中の会計は、引きもきらぬ接客に目の回る忙しさだ。
 潮祭の開会宣言が済んでから一時間が経過したが、客はまだまだこれから増え続けるだろう。
 各クラス、クラブから上がってきはじめた当日売り上げの精算も追いつかない様子で、会計長の目が釣りあがっているのが傍目からでも分かる。見かねて手伝いを申し出たところ、「結構だ!」と断られた。
 城西学生会は生徒会と会計部の両輪で運営されている。
 他にも選挙管理委員会や監査など、学生会から一歩離れた機構は存在するが、季節労働なだけに出番は少なく印象も希薄だ。
 同じ学生会とは言え、やたら目立つ存在の生徒会に比べて、地味極まりない会計部が表立って活躍する場は学年末と学園祭のみ。
 俺が会計でも生徒会の手など借りたくはない。
 気持ちは十分理解できるので、社交辞令を断られた後は勝手に忙しくさせている。

「特別することもないし、昼までこんな調子だよ。どこか回ってくれば?」
「いや……そうだな。見回りでもしてくるか」

「確か川田は講堂担当だったね」とニヤニヤしている櫻井に、「おまえはどこへも行くな。ここでお飾りになって愛想を振りまいてろ」と念を押し、「すぐ戻る」と言い置いて本部テントを出た。
 元会長とは言え未だに人気が高い櫻井がフラフラ出歩いた挙句、化学部にでも行かれたのでは示しがつかない。
 もっとも化学部は、現在どこにも存在しないことになっているのだが。

 鴫原先生が爆弾……もとい怪しげな花火を作り、実験棟を吹き飛ばしたのは記憶に新しい。
 奇跡的に生徒への被害はなかったが、建屋の損害は甚だしく、化学部は文化祭が終了するまで活動停止を言い渡された。
 活動しようにも実験棟の一部は化学部が吹き飛ばしてしまった為に、建て替えを余儀なくされ、全館立ち入り禁止となっている。
 お陰で正門をくぐった先にある、ちょっとした憩いの場となっていた洒落たアプローチには、臨時実験棟として味気ないプレハブ校舎が立ち並び、景観が著しく損なわれてしまった。

 鴫原先生は器物破損、監督不行き届きを理由に、十日間の謹慎処分にされたのだが、逮捕は免れたものの警察と消防からも厳重注意され、一時はそれなりに反省し、落ち込んでいたようで、ざまあみろと思ったのも束の間。謹慎が明けてしまえば、どこ吹く風だ。
 元が臨時採用の非常勤保健医ではあるが、あんな人物でもいなければ困るのか、校長も随分と甘い処分だ。スッパリとクビにしてやれば良かったものを。
 だがしかし、化学部がいないこの二ヶ月は、非常に平和な学校生活を送ることができた。
 それだけでも喜ばしい。良しとしよう。


 十一月にしては穏やかな小春日和。
 客足も上々で、我が校の下見に訪れた受験生らしき中学生の姿も多い。
 男子校であるにも関わらず、普段着姿のおばちゃんがやたら多いのは、若い男を見て目の保養と言うわけではなく、生物部で栽培販売している無農薬野菜や、半ノラ化しているニワトリが産む野性味溢れる卵が目当てのせいだ。

「高須はあの卵、食べたことある? 凄く味が濃くて美味いんだよ」
「……なんでおまえが、生物部の卵の味を知っているんだ。まさか盗んだんじゃないだろうな! 手癖が悪い会長の尻拭いなどご免だぞ!」
「元会長だってば。僕が盗ったんじゃないよ。鴫原先生が持ってたのを調理したんだ」
「俺も食ったことあるぜ。一個頂戴して卵かけ飯にしたんだが、絶品だったな。思い出したら無性に食いたくなって来た。保健医の奴が持ってるのか?」
「どうかな。たまに保健室の冷蔵庫に入ってることがあるけど」
「貴様ら……」

 ああ、今朝の嫌な会話を思い出した。
 川田と言い、櫻井と言い、なにが楽しくてあんな変人保健医に懐いているのか、俺には理解できない。
 生物部と聞いただけで頭痛がしてきそうだが、生物部の販売所を尋ねるおばちゃん達に懇切丁寧に場所を教え、校内マップを覗き込む近隣の女子高生で賑わう管理棟の中央昇降口前を通り過ぎ、広大な敷地の端を目指して、ゆっくりと歩きはじめた。

 遊歩道と平行している車道を、先ほどから二人乗りのママチャリが何台も行き交っている。
 荷台に「城西名物人力車」と書いたのぼり旗を立て、広大な敷地を巡る移動手段として、百円で客を乗せてどこまでも走る。
 城西カラーでもあるモスグリーンのユニフォーム姿でチャリを漕いでいるのはバスケ部で、潮の文字を白く染め抜いた、藍色の印半纏を着こんでチャリを駆っているのは陸上部だ。
 安全第一の為に安定性があり、スピードがあまり出ないママチャリ、客はヘルメット着用ではあるが、足腰が自慢である若い兄ちゃんの体に堂々としがみつけると言うので、毎年この交通手段は妙齢のご婦人方に大変な人気があるらしい。

「ウッス、高須!」

 チャリの尻に女子高生を乗せた印半纏も誇らしげな神田が、弾んだ声を掛けて通り過ぎた。印半纏のチャリは女子高生限定車なのだ。
 この印半纏を賭けて、毎年バスケ部と陸上部は必死に試合成績を上げることになるのだが、それが常勝! 常陸木城西の原動力となっていようとは、誰が思うだろうか。県のお偉いさんが知ったら絶句するだろう。
 それにしても女なんぞをケツに乗せて、ハシャグ輩の気が知れん。
 あんな脂肪の塊を乗せて、さぞかし重たかろうに。なにを鼻の下を伸ばしているのやら。
 そう言えば二年前にも、女子高生を乗せて走るチャリを見て同じ事を呟いたな。

「女の身体は脂肪がついて柔らけぇからな。背中から抱きつかれると、胸がこうムニッと当たる感触がたまんねぇのさ。女の肌ってのは男にしっとりと吸い付いて来る。気持ちいいぞぉ」

 あの時、隣でそう返して笑ったのは、あの人だ。
 思えばいつも一言余計なことを言いやがるから、くだらないことで喧嘩ばかりしていた。
 あの時も「それなら女を抱けばいいだろう。もう俺に触るな」と啖呵を切ったのだ。
 それと言うのも、あの人は俺が女を知らないとばかり思い込んでいたからで、チェリーボーイをからかったつもりだったのだろうが、開き直った俺に「童貞じゃない」と宣言された途端に逆切れしやがって。
 文化祭の真っ最中だと言うのに、そのまま浅黄寮の空き部屋に連れ込まれたっけな。

「その挙句が、”二度と女を抱けないくらい可愛がってやる”……か。二度と女を抱けなくなったのは、アンタの方だろうが。ったく、バカだよな」

 あれからまだ二年しか経っていないのに、とても昔のことのようだ。
 あの人がいなくなって丸一年以上が過ぎたが、こんな風に懐かしく思い出せるとは思わなかった。
 一年忌が近づいた時には気が変になるかと思ったが、それもどうにか乗り越えることができたのは、あのアンポンタンが傍にいてくれたお陰かもしれない。


はい、ここまでーっ。
とまあ、こんな感じで始まる話でございます。
ちょこっとと言いながら、結構あった?
テンション上げて頑張って仕上げたいっす!ふぁいとだ、おー!

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