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今日は、黄表紙本と山東京伝について少し。
「八丁堀黄表紙綴り」は、その名の通り黄表紙本です。
黄表紙本というのは、その名の通り黄色い表紙の大人向けの洒落本を言います。
深川や吉原の遊郭などの話を面白可笑しく、挿絵入りで書いてありました。
今で言うならば漫画本のようなものかな。
黄表紙本と言えば、語らずにはいられないのが山東京伝(さんとうきょうでん)!
とぼけた顔の男が暖簾から顔を覗かせた図柄の「京伝手ぬぐい」と言えば分かるかな。
あの絵を描いたのが京伝です。(分からない人は「京伝手ぬぐい」で検索してみてね)
京伝という人は、浮世絵も描けば、戯作も書く、広告も書く、マルチクリエイター。
この人の妹も黄表紙本を書いていたそうですよ。兄妹揃って才能豊か!
京伝が活躍した頃は、ちょうどバブリー田沼から名君・松平定信への移行期でした。
松平様は財政建て直しの手腕を買われて、田沼様失脚の後を任されたお方。
三大改革の一つである、緊縮財政、風紀取締りの寛政の改革を徹底した堅実派です。
名君と謳われる松平様ですが、「贅沢は敵だーっ」と言う遣り方に町民が不満を募らせ
始めると、京伝は艶っぽい漫画だけでなく、政治を何気に風刺した黄表紙本を発行。
するとたちまち「こいつはいいや」と庶民に大ブレイクしました。
お上の政策を悪く言うなど、とんでもないことでしたから、下手をすれば打ち首だと
言うのに、まったく大胆不敵な作家です。
表現の自由を奪われたのでは堪らない!という抵抗もあったでしょうけれど、これを
ネタに書いてやれと、作家の腕が鳴ったのではないかと思うのですが、どうでしょうね。
京伝の黄表紙本に登場したのは、なにもケチケチ松平様だけではありません。
実在する町民や花魁も描かれました。名前を伏せてありましたが、リアルな描写から
それと知れる仕掛けになっていて、これは誰かと当てる楽しみがあり、またまたベスト
セラーになる勢いで売れたのです。
中には実名で登場する人物もいたそうですから、知人友人は思わず買ちゃいますよね。
「あの人、本当に吉原でそんなことしたのかしら」という、どこまでがフィクション
なのだか分からないドキドキ感が、きっとウケたのだと思います。
ちょっとテレビのワイドショーっぽいですね(苦笑)
そうすると「財政難だと言うのに娯楽に興じるとは何事かっ」とまた松平様の怒りが
燃え上がり、その裏をかいて京伝は…まるでイタチの追いかけっこ。
やり過ぎたために手鎖りの刑に処されたこともあったようです。
ま、京伝のような人は別格として、粋でイナセで喧嘩っぱやく気風の良い江戸っこの
気質を面白可笑しく描いた、ちょっとスケベな大人の漫画本として、黄表紙本は
明治初期まで続きましたから、たいそうな人気があったというわけです。
他には赤本、黒本がありまして、赤本は子供向けの御伽草子(絵本)で、黒本は浄瑠璃や
歌舞伎、敵討ちなどの読み物。それぞれ表紙の色を称して呼びました。
さてと、明日は吉原へ足を伸ばしてみようかと思います。

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