お江戸パラレルその２

昨日の強風で目も鼻も大打撃を受けました。耳の穴まで痒いです！
どうにも我慢できず鼻炎薬を服用。すぐさま眠気が襲って来ます。
ああ、もうダメ。意識が飛んじゃう〜〜
その前に、お江戸パラレルでお茶を濁しておこう。
ほんとにもう使い物にならない母でスミマセンーっ。
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「川田屋と言えば日本橋本石町でもちっとは名の知られた呉服屋だ。そこの若旦那が
美人絵に血道を上げているってのか。いい気なもんだな」
「いやそれがそうでもねぇんで。姿絵に惚れるだけなら可愛いもんだが、あすこの
若旦那は綺麗な女なら手当たりしだいなもんで、相当評判が悪いんですから」
「ふーん。どう悪い」
「どうもこうもありゃしません」

金に物を言わせて女を抱くと言う川田屋の悪行非道は、寒河江の耳にも届いていた。
店の名前をちらつかせながら「贔屓の役者に会わせてやろうか」と言葉巧みに囁きかけ、
その代償として身体を弄ぶ川田の手口に掛かった女は、町娘ばかりとは限らない。
噂では武家の妻女もいるらしい。
気に入った女があれば「一度があれば二度も同じことだ」と、しつこく付きまとう。
「旦那に知られたくなけりゃ言うことをきけ」だの「小遣いを用立てろ」だのと
骨をしゃぶられた挙句に飽きられる日を待つ女ばかりだ、あんな酷い野郎は見たことがねぇ、
と圭祐の鼻息が荒い。

「その点、寒河江の旦那は違う。女の方で放っとかねぇ。さすがは旦那だ」
「ふん、それとこの女とどう繋がりがあるんだ」
「それがどうやらあの野郎、この女に一杯食わされたようで」
「ほぅ、では本当にいるのか」

覚えのある太夫はいないし、あまりにも綺麗過ぎる姿絵に、これはてっきり絵師が
てめえの理想を描いたのだろうと見当をつけ始めていた寒河江は、圭祐の言葉に驚いた。
圭祐の話によると、川田屋が女の姿絵を蒐集していることを人づてに聞いた絵師が、
この絵を川田屋に届けたらしい。
一目見て気に入った川田屋は、早速女に会ってみたいと言い出し、絵師の手引きで
鰻屋の二階へと案内された。
絵師と共に現れた女は頭巾で顔を隠していたそうだが、ちらりと見た鰻屋の主人が
言うには「この辺りでは見ない顔だが、とんでもなくイイ女」だったらしい。
川田屋がヤニ下がったことは言うまでもない。
ところが注しつ注されつしっぽりするはずが、気が付けば身包み剥がされ朝になっていたという。
それきり絵師は姿をくらまし、女の行方も知れぬままだ。
酒に薬を混ぜたに違いないと川田屋の怒りは凄まじく、草の根分けても絵師と女を
探し出せと躍起になっているらしい。

「見つかりゃただじゃ済まねぇ。半殺しの目に合わされた挙句、売り飛ばされちまうのが落ちだ。
男の方はどうでも良いが、こんな綺麗な女が勿体ねぇと思いませんか。ねぇ、旦那」
「……どこの絵描きなんだ」
「それが女が耕さんと呼んでいたとしか。元は役者絵を描いていたらしく、そのツテで
川田屋と知り合ったようです。川田屋は役者絵を見せびらかして女を釣ってましたから」
「ひょっとして太夫の真似事でもさせて描いたか。圭祐、その耕さんとやらを探し出せ。
芝居小屋を回れば素性が知れるかもしれねぇ。それと川田屋と関係した女達を洗ってみろ」
「ガッテン承知之介だ！　って、なんで旦那が張り切ってんですか？」
「いやなに、俺もこの女に一目会ってみたくなったのさ」

つづく(^^;