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東日本大震災で被災しました。PCが壊れ、ビルダーも壊れた為、サイトは書庫化しています。
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北関東、入梅してから肌寒い日が続いています。今朝は足が攣りそうになってガバッと
目が覚めました。うー、まだ脹脛が引き攣ってます。痛い。
さぁ、今日も明日も明後日も明々後日もお出掛けモードだ!
日曜が来るまでガンバロー!ファイト!

■以下、メッセ御礼に参りまするv

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世界が終わるまで7


廊下には溜まった熱気が泥となり、足に絡みついて離れない。
重たい身体を引きずるように、熱気の運河をのろのろと進む。
俺の後ろを数歩離れて、むっつりと黙り込んだ川田がついて来ていた。
黙って縦に並んで歩くことに奇妙な違和感を持った俺は、ああ、そうか、いつもは川田が俺の前を歩いているのかと思い当たった。
並んで歩いていた川田が、一歩先を行くようになったのはいつからだろう。
俺がそこにいることを確認するかのように時々振り返り、瞳の底でうなづく
素振りをするようになったのは……


川田が俺の背中を見ている。
様々な疑念が入り乱れているらしい視線を背中に感じながら、結構、視線とは
痛いものなのだと気づく。
俺もそんな目で川田を見ていたのだろうか。
気づかうような、尋ねるような、射殺すかのような視線で。
教室のドアに手を掛けた俺を、便所を出てから一言も発しなかった川田が止めた。

「授業に出る気なのか」
「当然だろう」
「まだ顔色が悪いぞ。寮に戻った方が……」
「どけ。邪魔をするな。俺は弁護士になると決めたんだ」

おまえとは違う。
剣道を辞めたあの日に弁護士となる誓いを立て、この一年猛勉強して来たのだ。
たったの一年でドン底の成績だったγ2からα1クラスへと脅威的な進化を
遂げた俺を見ろ!
万年ガンツーのおまえと一緒にするな。
俺は堅すぎるほど堅気な仕事に就くと決めたんだ。
将来、おまえがテロに巻き込まれようが、イラクに行こうが、どこで死のうが、
俺の知ったことじゃない。
夢など見る間もないほど働き、平凡で退屈だなどと省みる暇など絶対に作らず、
寝不足でフラフラになりながら激務をこなす、テレビにも引っ張りだこの
超売れっ子弁護士先生になってやる!

「分かった。けど、あんまり具合が悪そうな時には引きずってでも帰るからな」
「……勝手にしろ」

意地でも寮に戻る気などなかったが、100分授業を二講義受けたところで、
吐く物がなくなった胃が痙攣を起こした。
キリキリと捻れる上腹部の痛みに、思わず椅子から転げ落ちる。
まずいなと思った時には、川田がすっ飛んで来ていた。

「高須っ!」
「触るな……なんでもない」
「馬鹿野郎っ! どこがだよ!」

床の上で身体を丸めて痛みをやり過ごそうとする俺に、川田の怒声が降りかかり、
無理矢理抱き起こそうとする腕が絡みつく。
だから、引っくり返る直前の胃の上を押さえるなと言おうとして、夕べも
こんなことがあったなと思い出した。つくづく学習能力のない奴だ。

「なに笑ってんだよ。真っ青だぞ。腹か? 胃が痛いのかっ」

そうか、俺は笑っているのか。
胃が捻じ切れるかと思うほどの痛みを感じながら笑っているのか。
やはり馬鹿が一人傍にいると退屈しないらしい。


俺の頭を自分の胸に押し付けて抱き締めて来る、丸めた身体をすっぽりと覆う
36度と少しの熱さ。
汗で濡れて張り付いたシャツ越しに伝わる体温は、キリキリと痛む身体に優しく、
柔らかだった。


心地良い。
背中を丸めたこの格好は、まるで羊水に浮かぶ胎児だ。
親指ほどもない小さな芽は、36度と少しの熱に守られて、平和で幸せな夢を
見ているのだろう。
決して毒などではなかった。


数多の宗教と価値観、世界観の相違。
政治的な思惑に揺れる世界情勢。
大人の勝手な都合で引き起こされる戦争。
テロリスト達により繰り返される報復劇。
60年経ても尚、肉体を蝕む傷跡。
そして、理不尽なまでに突然すぎる飛行機事故。
今日が平和だからと言って、明日が約束されているわけじゃない。
巻き込まれて死ぬのは、いつでも無力な者達だ。

「川田」
「喋るな。今、立花が保健医を呼びに行った」

低く唸る声に喉の奥が引き攣った。

「笑ってる場合か!」
「どうして震えているんだ。胃が痛むのはおまえじゃなく俺の方だぞ」
「うるせぇ。放っとけよ」
「おまえらしくもない。それでも野獣・川田か」
「喋るなっつってるだろうがっ」

背骨でもへし折る気なのか、抱き締める腕に力が籠もる。
だが、益々熱を帯びる川田の身体が、不思議と痛みを和らげているようで心地良かった。


36度と少しの温かさに包まれて、俺はもっともっと小さく丸くなって行く。
消えて行く痛みに代わり、今度は眠気が襲って来た。
夕べはろくに眠れなかったのだ。
このまま平和で幸せな夢を見るのも悪くない。

「ハル? おい! どうしたっ。なにか喋れっ」

その名前で呼ぶのは止めろ。
喋るなと言ったり、喋れと言ったり、本当にこいつは馬鹿だな。


こんな脆弱な俺は捨てて行け。
おまえは俺のような狭量な人間に縛られて良い奴じゃない。
解放してやる。意地や恐怖からではなく、心からおまえを解放してやるよ。

続く

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Book Markにテキストサイトさまとイラストサイトさまを、勝手にお迎えしています。
リンクフリーとのことでしたので、本当に勝手に…(汗)
どちらも、お気に入りサイトさま発掘の旅の途中での出会い。
学生大好きな母のハートのド真ん中を射抜かれました。
やはり旅はしてみるものです!

■「薄荷キャンディさま」
コメディは元より、シリアスもテンポの良い文章を書かれる方です。
またタイトルセンスの素晴らしいことと言ったら!
ああ、私もかくありたい…羨望を越えて惚れました。

■「Kiss of Lifeさま」
高校球児達のイラストを描かれています。美しいです。
ユニフォームに隠された肉体が素敵です。色使いが素敵です。
グローブやプロテクターなど、小道具の質感表現が見事です。
今どきの男子高校生の顔してるなぁとドキドキします。

母、好きだと思ったら、本当にマメに通い詰めます。
読むペースが遅いせいもありますが、ストーカー並に通います。
でも、好きで好きで惚れ抜いていても、なかなか告白するに至りません。
イイ年しているので、衝動に身を任せることができないせいもありますが、
まぁ色々と察して下さいな(小心者の苦笑)
Book Markページは、母が遊びに行くドアだと思って下さいね。
というわけで、我が家では相互リンクはあまり重要ではありませぬ。
皆さんも母と同じドアから遊びに参りましょう〜v

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うーむ、川田に勝手をさせると言いたい放題です。
翠ちゃんじゃないけれど、ちょっと殴ってやりたくなって来ました(苦笑)
もっとも翠ちゃんは「はい、吉岡君!」の鴫原先生の掛け声に釣られて、
思わず引っ叩いちゃったのですけれどね。
20話までは川田視点の予定なので辛抱です。
しかし「日記で連載小説」で準主役を張っている人物と同一とは、とても
思えませぬな。
こんな川田でも一年経つと大人びて来ると言うことで…
いや、本家本編と日記で小説は別世界ですから、川田はずっと野獣のまんまかも。

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おはよーございます。北関東、凄い雨です。側溝は溢れかえってます。
こんな土砂降りだと言うのに、今日はこれからお出掛けなのです。
毎日通学、通勤の皆さんは「なに言ってんだ!」ですね。すみません。
母、人生が自由時間のみで構成されている人間なもので(汗)
むー、OL時代は台風や大雪の時、わたしゃどーやって通勤していたのだろうか。
もうすっかり記憶の外です。
帰宅しましたら、速攻で「日記で連載小説」更新します。
それでは、またのちほど。

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世界が終わるまで8

阿世賀先生が乗った飛行機が太平洋上で行方を断ったのは、昨年の秋のことだ。
あれからもうすぐ一年になろうとしている。

「ちょっとアメリカに研修に行って来る」

そう言ったきり戻って来ない人のことを、俺は忘れたことなどない。
この世で一番愛した人を忘れたりはしない。


川田が俺と阿世賀先生の関係にはっきりと気づいたのは、多分あの時だろう。
線香の匂いだけが妙にリアルな葬式で、俺は泣くこともできなかった。
遺体も遺品も見つからなかったというのに、阿世賀先生がこの世にいないという
現実を受け入れることなど、どうしてできただろう。
棺桶の中は藍染の胴着と竹刀が入っているだけだというのに、泣けるわけがない。
白戸先生も矢尾板も、剣道部のOBも誰もが真っ赤に泣き腫らした目をしているのを、
黒づくめの人波の後ろからボンヤリと見ていた。
まるで出来の悪い、陳腐なテレビドラマを見ているようで、全く現実感がなかった。


葬式から帰った晩、部屋に押し入って来た川田は「なぜ泣かない。おまえが
泣いてやらずにどうするんだ。泣けっ」と迫った。

「なぜ泣く? 理由がないだろう」
「阿世賀さんが死んだんだぞっ!」
「やめろっ。死んでない! 帰って来るんだっ!」

「土産はなにが良いか」と笑ったのは二週間前のことだ。「たったの10日間だからな、
浮気するなよ」と身体中に付けられた印は、まだ完全には消えてはいなかった。
ここに付けてくれと強請った肩口のキスマークは、自分の唇が届く範囲を見計らったものだ。
唇を重ねるように、ムキになって何度も吸い上げたそこは、熟した木苺色に腫れている。
赤く熟れた肩を更にきつく吸いながら、自分で自分を慰めたものの勃たなかった。
事故の知らせを聞いた日から、俺は勃たなくなっていた。


一瞬、なんの話だか分からなかった。次に俺を襲ったのは、足元から世界が崩れて行く感覚。
信じることなどできずに、何度も携帯に掛けた。何度も、何度もリダイヤルし続けた。

「お客様がお掛けになった番号は、ただいま電波が届かないところに……」

繰り返されるメッセージに変化はなく、なんで出ないんだ、なにやってるんだと腹が立った。
たとえ殺したとしても死にそうにない奴が、飛行機が落ちたくらいで消えてなくなる
はずがないではないか。
きっとふざけているのだ。皆が、俺が心配しているのを、どこかで笑って見ているに違いない。
そういう子供地味たところのある人だった。


たかが一介の剣道部員が現地に飛ぶわけにも行かず、毎日TVに齧りついて情報を待った。
待って、待って、待ち続けていた俺に、ある日突然、青葉先輩が「明日通夜で、
明後日が告別式だそうだから」と告げた。
決して目線を合わせようとせず、酷く言いにくそうに。
俺はなんと返事をしたのだったろう。覚えていない。
ただ、あの人が帰って来たらビックリするだろうなと思った。
きっと「勝手に俺を殺してくれるな」と笑うだろう。

「死んだなんて言うなっ……殺すぞ」
「高須……阿世賀さんの乗った飛行機は落ちたんだ」
「貴様っ!」
「助かった見込みはないっ」

殴りかかった俺を押さえつけようとする川田と揉み合ううちに、涙が溢れて来た。
泣きたくなどない。泣いたら、あの人がもういないことを認めてしまうことになる。
俺は、俺だけは認めるわけにはいかないと言うのにっ。

「ちくしょう……帰って来るんだ……約束したんだ」
「高須、いいんだ。泣けよ。泣いちまえ」
「ちく……しょう……なんで電話に出ないんだっ。ふざけんなっ。早く帰って来いよ!」

泣き喚きながら暴れる俺にボコボコに殴られながら、川田も泣いていた。
やがて動かなくなった俺を抱き締めながら、声を押し殺して泣き続けた。

「土産はなにが欲しいかって聞いたんだ」
「うん」

もういないのか。どこにもいないのか。
俺の身体を一杯に満たして溢れ返させるあの人は、もう帰って来ないのか。

「……先生って呼ぶと怒るから……アンタとしか呼べなかった」
「……」
「本当は名前で呼んでやりたかったのに……もう呼べない」
「俺が呼んでやる。ハルって呼んで傍にいる」

話が全く通じていない。なんてトンチンカンな奴だ。
そう思ったら、こんな時だと言うのに、ふっと笑みが漏れた。

「バカだな。おまえは、あの人じゃないだろう」
「俺じゃ、代役にもならないか?」
「おまえでイけたら考えてやっても良い。どうせ無理だろうけどな」

泣き笑いした川田のその顔は、なぜだろう、あの人に少しだけ似ているような気がした。
その晩、川田に抱かれた。
川田に抱かれながら、二度と戻らぬあの人を思い、なぜこの温もりではないのだろうと泣いた。
三日三晩、川田は俺を抱き続け、流した涙も枯れ、夢を見ることもなく眠りにつくように
なった頃、二十日ぶりに吐精した俺は、身体が心を裏切ることと、この世に縛り付け
られている自分を知った。
泣いて喚いて疲れ果てた末に、結局、俺は川田を身代わりにしたのだと言うのに、
肉の快感を呼び起こし、俺をこの世に縛り付けたのはおまえだと、全てを川田のせいにした。


最低だ。


川田が俺を縛り付けたわけじゃない。
俺が川田を縛り付けたのだ。

続く

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